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大阪地方裁判所 昭和41年(行ウ)5号 判決 1966年6月27日

原告 若野梅次

被告 大阪市固定資産評価審査委員会

主文

被告が昭和四〇年一二月一三日原告に対してなした大阪市住吉区浜口町四〇八番地の一九の宅地についての固定資産評価価格を八二九、五〇〇円と修正した決定(裁決)を取消す。

訴訟費用は被告の負担とする。

事実

(当事者双方の申立)

第一原告の申立

主文と同旨の判決を求める。

第二被告の申立

「原告の請求を棄却する。訴訟費用は原告の負担とする。」

との判決を求める。

(当事者双方の主張)

第一原告主張の請求原因

一  原告は大阪市住吉区浜口町四〇八番地の一九宅地八九・二五平方メートル(二七坪)を所有しているが右土地の南側(原告所有家屋の前面)に幅員二・七二メートル(一・五間)の私道が東西に、西側に幅員一・八一メートル(一間)の私道が南北にそれぞれ通じており、右土地の南側一〇・九〇平方メートル(三・三坪・南北一・三六メートル=〇・七五間、東西八メートル=四・四間、以下南側私道部分という)、西側八・九二平方メートル(二坪七合、東西〇・九一メートル=〇・五間、南北九・八一メートル=五・四間、以下西側私道部分という)が右私道に含まれている。

二  原告は昭和四〇年三月二二日住吉区長に対し右土地の固定資産の評価につき右各私道部分が公共の用に供する道路であることを理由に右各私道部分について非課税規定の適用を申請したところ、同区長は右南側私道部分につき非課税規定の適用を認め、土地課税台帳の登録価格を八五三、二〇〇円と修正したが西側私道部分についてはこれを認めなかつた。そこで原告は適法に被告に対し審査の請求(同年七月四日)をしたが被告は昭和四〇年一二月一三日に西側私道部分につき非課税規定の適用を認めず、評価価格のみを八五三、二〇〇円(宅地七八・三四平方メートル=二三坪七合として三・三〇平方メートル=一坪三六、〇〇〇円の割合)から八二九、五〇〇円(三・三〇平方メートル三五、〇〇〇円の割合)に修正する旨の決定(裁決)をした。

三  しかしながら右西側私道部分は公共の用に供する道路に該当するので非課税規定の適用をしない被告の決定は違法であるからその取消を求める。

第二請求原因に対する被告の答弁

一  請求原因第一項のうち原告主張の土地は原告の所有であること、右土地の南側(原告所有家屋の前面)と西側にそれぞれ私道があり、南側私道部分一〇・九〇平方メートルならびに西側私道の中心から東側の土地が原告の右所有地内にあることは認める。

二  請求原因第二項は認める。

三  請求原因第三項は争う。

第三被告の主張

地方税法第三四八条第二項第五号に規定する公共の用に供する道路とは所有者において何等の制約をもうけず、ひろく不特定多数人の利用に供するもの(昭和二六年七月一五日地財委第一一四〇号都道府県総務部長あて地方財政委員会事務局税務部長通達)と解すべきところ、西側私道はその幅員、他の道路との関係(東側私道のように公道から公道へ直接通じていない)からみて一般に利用されるものではなく、西側私道の利用者はこれに面する家屋の居住者およびその訪問者のみに限定されており、一般人には通行の必要もなく、その利用もしていないのであつて、西側私道部分をもつて右にいう公共の用に供する道路ということはできない。なお建築基準法第四二条二項の規定は道路の幅員が四メートルに満たないもので現実に建物が建ち並んでいるものについて適法な建物としての取扱をするための救済措置を定めた経過規定であり、右規定による指定道路であるからと云つて直ちに非課税の対象となる公共の用に供する道路とはいえない。

第四被告の主張に対する原告の反駁

原告所有地の西側私道は南側私道に較べてその幅員はやや狭いが道路沿いの家屋の戸数は南側は五戸であるのに対し西側は一四戸あり、道路としての機能(上下水道管、ガス管等の埋設設備)も劣らず、又その利用度も高い状態であり、袋小路ではない。原告としては家屋前面の南側私道は必要であるが西側私道が不必要であるからその私道を廃止して西側境界線まで利用したのであるが右道路が建築基準法第四三条第二項による指定を受け、その変更、廃止につき制限があるのでやむなく一般公衆が自由に通行できるようわずかな土地をさいて提供しているのであり、又他から何等の報酬も受けていない。

(証拠省略)

理由

一  請求の原因第一項のうち大阪市住吉区浜口町四〇八番地の一九宅地八九・二五平方メートルが原告の所有であること、右土地の南側(原告所有家屋の前面)と西側にそれぞれ私道があり、南側私道部分一〇・九〇平方メートルならびに西側私道の中心から東側の土地が原告の右所有地内にあることは当事者間に争がなく、原告本人尋問の結果とそれにより真正に成立したものと認められる甲第三号証によると西側私道部分の面積は原告主張のとおりであることが認められ(この認定に反する証拠はない。)、請求の原因第二項は当事者間に争がない。

二  そこで西側私道部分が地方税法第三四八条第二項第五号に規定する公共の用に供する道路に該当するか否かについて判断する。

前記甲第三号証、成立に争のない甲第五号証、原告が昭和四〇年五月二六日に西側私道を南側私道から撮影した写真であることが当事者間に争のない検甲第一号証、原告本人尋問の結果ならびに弁論の全趣旨によると原告の所有土地ならびにその附近の道路の状況は概略別紙図面記載のとおりであつて、東側公道から西側公道に至る南側私道は幅員が約二・二七メートル、長さが約三五メートルであり、南側私道の東側公道から約一二米西側の、原告所有家屋南西角から北側に幅員約一・八メートルの西側私道が北方に分岐しており、西側私道は分岐点から一四メートル位北で東折して東側公道に出ていること、東側公道から西側公道までの間南側私道に面して建築されている家屋は五戸であり、南側私道と西側私道の分岐点から西側私道を通つて東側公道に出るまでの間に右私道に面して建築されている家屋は一四戸位あること、原告の右土地附近の道路の通行は比較的少ないところ、南側および西側私道については専ら各私道に面した家屋の居住者およびその訪問者が利用するほか一般人も通行し、その通行に何らの制限のないこと、等の事実が認められる。

ところで前記規定の公共の用に供する道路とは何らの制約を設けず、不特定多数人の利用に供する道路をいうものと解すべきところ、西側私道は南側私道と異なり直接公道から公道に通ずるものではないけれども南側私道を介して東側公道と西側公道に通じているのであり、道路の幅員、他の道路との関係からみて一般人の通行することも充分考えられ、又事実一般人の通行も認められるのであるから公共用道路から特定の数戸のみに通ずる私道と同視することができず、南側私道とその利用関係において実質的に異ならないのであるから西側私道は右に規定する公共の用に供する道路に該当するものとみるのが相当であり、西側私道部分は西側私道の一部として固定資産税を課することができないものといわなければならない。

そうすると被告が昭和四〇年一二月一三日に西側私道部分を非課税の対象としないでなした前記原告所有地についての固定資産評価額の修正決定(裁決)は違法なものとして、その取消を免れない。

よつて右修正決定(裁決)を取消すこととし、訴訟費用の負担については民事訴訟法第八九条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 石崎甚八 長谷喜仁 福井厚士)

(別紙)<省略>

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